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第17回 ハイライト「田中秀一氏」

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日本一の社員の育て方・会社の作り方

日時:2012年7月26日
株式会社FoomanLAB 代表取締役兼CEO
株式会社OBUcompany 取締役
田中 秀一氏



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自己紹介

 私の生まれは大阪の堺という所で、中学から大学まで柔道をやっていました。勉強はそれほど出来る方ではなかったのですが、中学の時の柔道の監督がすごく柔道の強い先生で、「頑張れば大学まで行かしてやる。」と言われたので、柔道を始めました。あまり、強くは無かったのですが、練習は一生懸命頑張ったので一応柔道推薦で大学まで行く事が出来ました。高校は体操や柔道などスポーツが強い所で、全国から選手が集まってくるような学校でした。その時に出会った先輩が佐賀県の人で、部活は違ったのですがすごく仲良くさせてもらっていました。大学を出て、どこに就職しようか考えたら、警察官などの公務員になるのか、企業に就職して柔道を続けるのかという選択肢でした。父親が大阪で不動産の経営をしていたので、相談したところ不動産を継ぐのはやめておけと言われました。なので、とりあえずフリーターになって将来はレゲェミュージシャンになろうという訳のわからない夢を持って関東で1年間生活していました。そんな時に、先程の高校の先輩から連絡があり、先輩と現在O・B・U Companyで取締役部長をやっている檜枝と3人で佐賀県の鳥栖市でたこ焼き屋を始める事になりました。元々は、先輩の入っていたたこ焼き屋に入社してやっていましたが、3ヶ月で共同経営者の人がお金を持ち逃げして倒産してしまいました。そこで、自分たちでたこ焼き屋を作って、その売上で居酒屋を開こうという目標を立ててたこ焼き屋をオープンしました。365日、試行錯誤工夫して働いて、ピーク時には1ヶ月に150万円を売り上げるほどになりました。

 その後、福岡で移動式の屋台たこ焼き屋をやったりと、様々な所に店舗を拡大させて1年後に念願の居酒屋を二日市にオープンさせる事が出来ました。その頃、先輩は引退し、同時に現在O・B・U Companyの代表をしている寺川が加入し、僕・檜枝・寺川の3人でO・B・U Companyを設立しました。その後、店舗を18店舗ぐらい増やして、昨年、居酒屋甲子園で日本一になり、ホールディング化を目指して新しい会社を設立しました。

経営と事業の違い

 経営と事業の違いは何だと思いますか?事業とは、一言でいえばビジネスです。では、ビジネスとは何でしょうか?ビジネスとは、お金儲けの手段です。つまり、利益です。利益は会社の外と内のどこにあるでしょうか?それは、外です。会社の内にあるのは、人件費や光熱費などのコストです。利益を持っているのはお客様です。お客様が来なければ利益は生まれません。では、どうやったらお客様は来てくれるでしょうか?それは、顧客を満足させられればいいのです。顧客満足無くして、ビジネスは成り立ちません。まとめて言えば、事業というのはビジネスというだけでなく、顧客満足ということです。では、経営とはなんでしょうか?経営は英語に直せばマネジメントという意味です。マネジメントと言うと難しい事のようですが、経営資源の事です。つまり、「ヒト」「モノ」「カネ」の事です。経営資源を使ってどのように目標を達成していくかを考えるのがマネジメントです。それは、社員誰でも考えられる事です。現場・管理職・社長三位一体となって行うのが経営です。そうやって顧客満足をあげられるかを考えていく事が大切です。

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 僕は、社員に「何のために生きるのか?」という質問をします。6年前、事業展開しようとしていた時に、社員が大量に辞めた時がありました。居酒屋を作る目標を達成したので、当時目標がありませんでした。なので、お金儲けのための店舗拡大に走ってしまって、社員がどんどん離れて行ってしまいました。そんな事があって、経営の勉強をしようと思いました。その時に、僕は何のために生きているのか、何のためにこの会社を作ったのか悩みました。悩んでいた時に、あるセミナーに参加し、トヨタ自動車株式会社の張会長と話をさせていただく機会がありました。その時、私は不躾ながら、「幸せとは何ですか?」と質問しました。すると、張会長は、「幸せとは、感じるものです。幸せになりたければ、相手に「ありがとう。」と言ってもらえるようにつとめることです。」と答えてくださいました。私は、その言葉に衝撃を受けました。確かに、人は幸せを感じるために生きています。不幸になるために生きている人はいないと思います。では、幸せとは何か?幸せとは、張会長に言われたように、「ありがとう。」と言ってもらえる事です。社員さんや取引先様、地域の方から「ありがとう。」と言ってもらえるような仕事が僕の目的であると気付きました。多くの人に感謝されるようなサービスを提供しよう、人材を育成しようと決めた時に、すごくやる気が湧いてきました。意味が変われば、行動が変わると気付きました。目標や夢を語る事も大切です。でも、一番大切なのは、何のためにという意味や目的を見出す事です。意味とは理由です。理由とは、何のためにという意味です。何のためにとは、きっかけという意味です。つまり、動機です。動機を明確にすれば目的が明確になります。目的の意味づけを明確にするとやる気が出てきます。やる気を見出すには、目的を明確にするという事が重要になります。

 それでは、経営の目的とは何でしょうか?私は、先程も述べたように周りの人に幸せを感じてもらうことです。商売とは、「ありがとう」の交換だと思います。お客様から「ありがとう」と言われ、こちらも「ありがとう」と言ってもらえる環境を作る事がビジネスだと考えています。ですから、私の経営の目的は、「ありがとう」を作って周りの人に感謝の気持ちを感じてもらう環境を作る事です。それを実現するために必要なのは、顧客の創造をすることであると思います。

 

人材育成

 次に、人材育成の話をしたいと思います。先日、日本能率協会が約3500社の企業に向けて、「企業の活性化についての調査」というアンケートを行ったところ、組織力向上の具体的な成果をあげられたと答えた企業は、16.4%にとどまったそうです。どの企業も組織力を上げる取り組みは行っているが、成果をあげられている所は少ないという結果でした。16.4%の企業がどういう所であるかというと、黒字を出せている企業です。黒字の企業は、組織の活性化が出来ており、赤字の企業は出来ていないという事です。黒字の企業は、黒字の出し方も組織の活性化の方法もわかっており、その差がこの結果になっていると思います。では、そもそも組織とは何でしょうか?チェスター・I・バーナードという経営者の方が組織についてこのように語っています。「人間は自分自身だけでは能力に限界があるため、その限界を克服し、共通の目的を達成するために他の人々と協力して一緒に行動するという事。組織を協働行為の体系と定義する。」何が言いたいかというと、組織とは、共通の目的を達成するための協働体という事です。組織を作るためには、3つの要素があります。一つ目に共通の目的。2つ目に協働の自発性。3つ目にコミュニケーションです。このままではちょっとわかりにくいので、噛み砕いて説明します。まずは、共通の目的についてです。企業にとっての共通の目的とは、理念やビジョンです。よく、理念とビジョンは別々に言われますが、私は2つで1つだと思います。ここで大事なのは、理念やビジョンが共通であることです。企業は個人の目的が尊重されがちですが、共通の目的を達成することで個人の目的を達成できるようにすればいいのです。私達働く者の目的は、顧客を創造することで各個人の目的を達成することにあると思います。では、顧客を創造するにはどうしたらいいかというと、価値を創造することです。顧客が来るのは、商品やサービスに価値があるからです。つまり、顧客にとって役立つ物を提供できた企業が顧客を創造出来るという事です。

 弊社の理念は、「人と食の価値を創造し世界を変える」です。人の価値とは、成長出来るという事です。つまり、私達の企業に来ればお客様に満足して頂けるサービスを提供できる人間に成長出来るという事です。食の価値とは、食そのものだけではなく、付加価値の事です。例えば、マクドナルドもモスバーガーも売っている物は同じハンバーガーです。しかし、お互いに提供している価値は違います。私達は、新たなお客様に喜んでもらえるビジネスモデルを作る事が目的であると考えています。最後に、世界を変えるというのは、世界で活躍する人材を育て、世界の人たちから「ありがとう」と言ってもらえるビジネスモデルを作る事です。それが共通の目的です。

 次に、協働の自発性です。共通の目的を浸透させて、自発的に仕事を協力して行うようにする事です。協力意識が強くて自発的になる人間。つまり、自分の可能性を信じられる人が組織には必要という事です。協力して、自分が中心となって目的に対して行動できる人を育てればいいのです。では、協働の自発性を持った人間をどのように育てるかというと、自分の可能性を信じられるようにする事です。自分の可能性を信じられない人は、人を助けようとしませんし、自発的に動きません。自信のある人は、助けようとする意識も高いし、自発性も高いです。では、どうすれば自分を信じる事が出来るのでしょか?それには、徹底した人財育成が必要だと思います。人財育成の方法は、会社の規模や理念で大きく変わります。なぜなら、それぞれの企業の求める人材は、理念やビジョンによって違うからです。方法は千差万別ですが、根底にあるのは自分を信じられる人間になるという事です。人財育成を行う上で、大切な事が3つあります。1つ目は、インプットとアウトプットは別という事です。つまり、わかる事と出来る事は別という事です。わかったからと言って出来るとは限らないのです。よく、「何で出来ないんだ!」と怒ってしまいますが、それは逆効果です。すぐに出来なくてもいいのです。出来るようにすればいいだけの話です。出来るようになるためにはどうしたらいいのか考える事が大切なのです。

 2つ目は、相手の考えを知る事です。私は、立場によって物の見方が変わると思います。状況や環境によって見方というのは変化します。何が言いたいかというと、人と違うという事は悪い事ではないという事です。自分の意見が正しいと決めつけ、他人の意見を聞かないと自分の可能性を大きく狭めてしまいます。相手の事を認め、考えを理解しようとする事は大切なことです。

 3つ目は、言葉の使い方に気をつける事です。同じ事を怒っていても、マイナスの言葉だけで怒るのと、ポジティブな言葉で怒るのでは全く感じ方が違います。マイナスの言葉は気持ちまでもマイナスにしてしまいます。この前聞いたのですが、人間は最後に聞いた言葉を覚えるらしいです。なので、私は話の最後はポジティブな言葉で終わるようにしています。そうすることで、ポジティブなイメージを言葉に持たせることが出来るからです。自分の可能性を信じるようにしていくためには言葉づかいに気を付ける事が非常に重要です。

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 組織について様々な事を述べてきましたが、協働の自発性を持つためには、一言で言うと成長出来る環境を作る事です。そのためには、育てる側が一番成長する必要があります。教えるためには、自分が一番それを理解しなければいけません。育てる側が成長すると、周りはそれに近づこうと率先して努力するようになります。そうやっていけば、自然に成長できる環境を作る事が出来ます。

 組織を作るための要素の3つ目は、コミュニケーションです。組織の定義は、共通の目的を達成するための協働体です。それを作るためには、共通の目的を浸透させていく必要があります。それと同時に、協働の自立性を持たすために、自分の可能性を信じられるような人財教育を行う必要があります。そうすれば、組織が出来上がります。しかし、それを行うためにはコミュニケーションが必要です。では、コミュニケーションとは何でしょうか?ある社員に聞くと、信頼関係と答えました。それは確かに間違いありません。しかし、私にとってのコミュニケーションの定義は、win-winの関係を作る事だと思います。コミュニケーションをとって、どちらかが負けるような構図になってはいけないのです。お互いが勝っていく、共に良くなっていく関係性を作っていく事がコミュニケーションなのだと思います。組織は、共通の目的を達成するための協働体です。そのために、1人1人が積極的にコミュニケーションをとっていく必要があるのです。組織においてのコミュニケーションとは、共通の目的を達成するために行うものでなければいけません。それは、仕事の話だけをしろという事ではありません。共通の目的を達成するためにはどうしたらいいのかを考えて、コミュニケーションをとっていく工夫をすれば良いのです。

外食産業のマーケット

 少し私達外食産業のマーケットの話をさせて頂きます。外食産業のマーケットにおいて、居酒屋の占める割合は6%ほどしかありません。この6%のマーケット、売上で言えば、1兆円のマーケットの中でシェアの争いをしています。その中でも、中小企業、福岡のマーケットに絞り込むと、144億円程のマーケットの中で争っています。では、その中でどのようにしてシェア争いに勝っていくかというと、顧客のニーズに応える事です。居酒屋に来るお客様は、安らぎや憩いの場でお酒を飲む事を求めてやって来ます。マーケットを分析して顧客のニーズを理解し、そのニーズに応えられるような戦略を立てて顧客を創造していく必要があるのです。

 顧客の創造とは、経済学者のドラッガーの定義によると、マーケティングとイノベーションの二つから成り立っているといいます。マーケティングとは、簡単に言うと、マーケットにINGを付けたもの、市場にINGを付けたものです。つまり、この店を作る事でどうやって人を呼びこめるかという事であると思います。イノベーションとは、変革という意味です。より大きな価値や行動を生み出し、市場や社会に変化を与えるという事です。これは、あくまで定義という意味です。

 私が言いたいのは、顧客の創造を行うためには、戦略思考を持つ事が大切という事です。自社が、業界の中でどうやって顧客に支持してもらえる会社になっていくのかの戦略を考えていく事です。戦略思考には、政策・戦略・戦術・戦闘の4つの要素があります。政策とは、理念やビジョンです。理念やビジョンという目的を実現させるというのが大前提と考えるのです。それを実現させるために戦略を考えます。戦略とは、大きく分けて内と外と2つの種類があります。内の戦略とは、どうやって組織を作っていくかという内需の戦略です。つまり、人材育成の方法を考える事です。外の戦略とは、どのようにすれば顧客が来てもらえるか考える戦略です。つまり、どのように利益を作っていくのかを考える事です。この2つの戦略を考える必要があります。

 では、戦術と戦略の違いとは何でしょうか?戦術とは、戦略を練ったものを実行していく事です。戦略とは戦う方法を考える事で、それを実行する事を戦術といいます。管理職が考えた戦略を、現場が実行して初めて戦略の是非がわかります。考えたものを実行して、それをフィードバックしてまた新たな戦略を考えるという流れが重要です。最後に、戦闘とは個人能力の事です。個人の能力を育てるという事です。この流れを考えて顧客を創造していきます。この流れでそれぞれ重要な要素があります。政策においては、揺るぎなくしっかりと構える必要があります。戦略においては、柔軟に顧客のニーズに応えられるような発想を持つ必要があります。戦術においては、戦略で考えた方法を確実に実行する必要があります。そうしなければ、戦略の良し悪しがわかりません。戦闘においては、個人能力を永続的に鍛え続ける必要があります。その流れをしっかりと理解する事が非常に重要です。

 様々な事を言ってきましたが、最後に戦略を考える上で一番重要な事は、何を選択しないかという事です。あれもこれも選ぶのでは無く、ターゲットを集中して何かに特化させて戦略を練っていく事が重要であると思います。経営の目的とは、顧客を創造する事です。ターゲットを絞る事が出来れば、戦略も練りやすくなって顧客を創造しやすくなると思います。私の話の中で何かヒントになった事があれば、それを会社で活かして頂ければ幸いです。今日は長い時間御清聴ありがとうございました。

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