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第13回 ハイライト「梅原勝彦氏」

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日時: 2011年9月3日(土)
つたえびと:梅原勝彦氏

~紹介~ 

株式会社エーワン精密取締役相談役。  1939年東京都生まれ。12歳からねじ工場で働き始める。1965年に実兄と会社を設立し、小型自動旋盤用のカム製造を開始。1970年に独立してエーワン精密を設立し、社長に就任。徹底した短納期で顧客からの絶大なる信頼を勝ち取り、工作機械に取り付けるコレットチャックでは国内シェア6割。2003年にはジャスダック上場。切削工具再研磨も事業化。2007年に取締役相談役に就任し、親族ではない新経営陣にバトンタッチ。また、中小企業経営者を応援するため、執筆や講演活動を行う。しかし、梅原氏は、「本業が製造業である」とし、原稿料や講演料は一切受け取らない主義を貫く。2008年6月期まで38年間、売上高経営利益率35%超を続けてきた。

プロローグ

みなさん、こんにちは。
 今日は可愛らしいお嬢さんばかりいらっしゃいますね。とても嬉しいです。(^.^)

 単なる回し工場、しかも行われている業務は、大部分がうちにしか出来るものではありません。それから、事実ですが、うちの技術が他所より飛びぬけて優れていて、特許を取得しているという訳でもありません。
 ただ、結果として、利益を出しにくいモノ作り業界の中で、創業41年以来、経常利益率が平均すると、39%という驚異の数字を出し続けてきました。
 リーマンショックの時は、最盛期と比較すると売上が35%ダウンしましたが、約23%の利益を出していました。また、様々な不況を乗り越える中で一度も値上げをしたことがありませんでした。自慢ではないですが、「我が身さえ良ければ」という周囲を踏みつぶすような経営の仕方をしたこともありませんでした。


 社員に出すものは出し、正当な経営を行い、値上げもせずに何故高い収益を得続けることができたのか、お話していきたいと思います。

梅原氏を勝ち組に導いた要因は育った環境にあった!

 

 私の生家は、戦前モノ作りの町工場を東京の都心部で営んでおり、それなりに繁盛もしましたが潰れました。当時、小学校2年生。住居は無くなり、そして、兄弟もばらばらになり、私は親戚の家に預けられ、小学校を卒業するまでそこから通学しました。卒業後は、金銭的に進学は困難だったので、町工場で働き始めました。12歳で社会に飛び込みました。決して、お涙ちょうだいで言っている訳ではありません。人よりも早くに社会に出たことで、大学卒業者よりも時間に余裕がありました。また、人の頭を利用する術を身につけることができたのです。この術が僕を勝ち組に導いたのだと思います。

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まず、12歳の時にねじを作る仕事から始まりました。よって、22歳の時には職人として一人前になっていました。そして、その腕を見込まれて東京都府中市にある、とある会社に入社しました。そこでの経験を通して、当たり前のことですが、顧客は、「良い品物を安く買いたい」のだということを知りました。また、日々、「機会があれば社長になりたい」、「チャンスがあれば企業したい」と思いながら過ごしていました。
 26歳の時、実兄とカム(運動の方向を変える機会要素)専用メーカーを大田区の片隅に立ちあげました。従業員は48人でした。値段は控えめ、納期は顧客に合わせるスタンスで経営していましたが、兄弟間の性格の違いなどの原因により31歳の時に兄と別れ、自ら企業しました。その時に、人よりも早く社会に出たのが大きな武器になっていたことを実感し、何か大きなことをする前に準備を完璧にしてからスタートするのではなく、やれることはどんどん先にやることが今の時代に必要だと思いました。

引退を意識して見えたこと

 起業した際に、いくつかの銀行に借り入れを申請しました。どの銀行も「年商1000万円の会社に2000万円の融資はできない」という返答でした。しかし、東京三菱銀行の社長は私の考えは筋が通っているという判断をして下さり借り入れを行うことができました。それから、コレットメーカーとして安定した利益を出し続け現在に至ります。引退を意識した時に、あることを改善しなければいけないことに気付きました。それは、我が社のビジネスモデルがいかに恵まれているかということを知らない若手社員が多いということでした。
 この業界で地位を築き上げたことによって、FAXや電話で次から次に注文が入りました。また、宅急便が普及しました。その結果、営業・納品・集金なしという恵まれた環境が出来上がったのです。古い社員なら多大なる努力があったからこそ現在のエーワン精密があるのだということを知っているのですが、それを理解している社員も私と同じようにいずれは引退します。私は、若い社員を叩き直そうと決意したのです。そこで、若手社員を叩き直すために、新しいビジネスを展開することにしました。切削工務に進出することにしました。その分野では、住友や東芝など大手5社が市場の7~8割を占めています。だから、エーワン精密が潜入しても勝率は低いのです。しかし、社員を教育するために、敢えてそういった難題を彼らに出しました。進出してから10年足らずで売上に占める比率が26%、利益率が29%に達しました。私の計算では、利益を出すのはかなり大変だと思っていました。その結果を受けて、エーワン精密は他社にはない利益を上げる仕組みを持っている会社だと気付きました。また、嬉しかったのは、ひ弱だと思っていた社員達は、ちゃんと教育をすればそれなりの成果を出してくれる子達であったということです。

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私は、彼らの偉業を見届けてから2007年に取締役相談役に就任し、次の世代に身を委ねました。社長は41歳、ナンバー2が42歳、ナンバー3はなんと39歳です。創業以来、私の手足となって動いてくれた役員が3人いました。彼らには「若い世代に会社を任せたいから、君らは今の地位を退いてくれないか」と言いました。当然、彼らは抵抗を感じ異議を申し立てました。しかし、私は、今は未熟だが、成長する可能性がある若い子達にバトンタッチすることが会社を存続させるために必要なことであると考えていたので彼らを説得しました。こうして世代交代しました。 
 私が、引退をするまで代表取締役として会社を経営してきたのですが、何か会社の方向づけをする時に自分なりの留意点がありました。全て当たり前のことばかりですが、まず、「今やろうとしていることが世の中に必要であるのか。」世の中に必要ではないものに進出して花が咲くわけがないのです。次に、「その事業はやりようによっては利益がでるのか。」会社というのは売上ではなく利益で生きています。利益が出る見込みがないものに会社の資金と人員を投入するわけにはいきません。それから、これは、私が一番こだわっていることなのですが、「業界のトップになる可能性があるか。」10年経っても自社がどの位の地位にいるのか分からない場合、絶えず他社に振り回されてしまいます。そして、「社員を守る。」これは、義務です。
 だから、一か八かという失敗したら会社が倒れるような事業に手を出してはいけないのです。つまり、社員を守るために事業をする上で必ず逃げ道を作って置くことを意識し行動すれば、社員も会社を守ろうと一生懸命な姿勢になります。そして、会社と社員との間に信頼関係が生まれます。



ついに明かされた!創業以来、高利益を出し続けた理由!!

 

 創業以来、高い利益を出し続けてきたのは、「業種に恵まれている」、「業界でのトップシェア」が引き起こす多量な注文数でした。また、不況時は、どの会社も販売価格を下げるのですがそれを行わず、仕事量を確保することを優先しなかったことです。しかし、それをする為には、利益を出さなければ出来ないことです。利益を生み出すには、やはりコストダウンをしなければいけません。これをしないと他社に勝てるわけがありません。コストダウンというのは、社員の頑張りだけではどうにもなりません。つまり、上に立つもの自らが先頭に立って、社員と同じ目線にならないといけません。製造業で言うならば、上に立つものは常に現場に入るべきなのです。そして、社員がものを言える雰囲気作りをすることも大切です。どうしたら社員が気持ちよく働けるのか工夫することが勝ち組の鉄則なのです。 
 その他にもリースが安く買える、短納期、競争力、無駄な社員や役員を置かない、製造業でありながら、強力な販売網を持っていることが要因の一つです。 
 また、エーワン精密は、時間の使い方は非常にシビアです。工場も本社もその日の仕事はその日のうちに行っています。それから、不況の時や好況の時にどう動くかも重要です。お金を使うタイミングは不況時が適しています。なぜなら、好況の時はお金の使い方が乱暴になり、不況の時はとても丁寧になるからです。好況の時にはひたすらお金を稼いでその分を不況の時に使うのが賢い方法なのです。 

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これは、大手の会社に嫌われる意見ですが、我が身さえ良ければという経営方針をエーワン精密はとりません。約8百数社のものづくりの会社を支えているのは、45万社の零細企業なのです。 
 世の中に税金を払うのを嫌がる経営者が多いように感じます。例えば4年間黒字で、1年間赤字である場合、税金で苦しむことは絶対にないのですから、税金はきちんと支払うのが良いですね。 
 それから、会議は絶対に朝行うべきですね。夜は駄目です。特に金曜日の夜は、社員は疲れているから早く帰宅させなければなりません。何故、朝を勧めるのかというと、この時間帯は物事を考えやすいような頭になっており、効率の良い会議が出来るのです。つまり、「朝型人間」が勝ち組の鉄則です。 
 私は、人の上に立つものは、出社前に頭を作って置いて、やるべきことはその日の内に済ませてしまうことを意識して行動すべきだと思います。そして、本を読むことが大切です。出来たら、経営の本よりも歴史がある本が好ましいです。経営の本を読んだから経営を上手く行うことはできません。経営に必要なのは、「心」なんです。だから、そういった意味で「心」の糧になるような本を読んでください。本を読むのも朝が良いですね。 
 もう一度言いますが、私は、人よりも前に行きたかったら「朝型人間」になるべきだと思います。
最後に、私から伝えたいことがあります。ある哲学書の言葉です。


「読書とは、道に迷った時に迷わないため、また、迷った時に正しい方向に行く道を学ぶためにするもの」 
 

これは、非常に正しい考え方ではないかと思います。読書を通して豊かな心を育てて下さい。


 

どうも、御清聴ありがとうございました。



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