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第16回 ハイライト「大野尚氏」

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強い会社にするために、強い人材を作るマネジメント

日時:2012年6月13日
ビッグ・フィールド・マネージメント株式会社
代表取締役 大野 尚氏

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マンションの1室からの挑戦

 私は、25歳の時にエイチ・アイ・エス株式会社に入社しました。それまでは、いわゆるバックパッカーとして海外を歩き回っていました。それから、日本に戻ってきてコックの修行だとかいろいろなことをやって、偶然澤田さん(現、エイチ・アイ・エス株式会社社長)と知り合って入社しました。

 入社した時に思ったのは、世の中には自分では考えられないほど大きなことを考える人がいるということです。まだ見えない未来のことをより鮮明に、リアルに語るんですよ。1番最初に廣田さんに会ったのは、小さなマンションの1室でジーパン・Tシャツみたいな汚い格好の人が見えもしない未来を鮮明に語っていました。うそつけ!とも思いましたが、未来の事を語る声のトーンや表情を見て、真剣さやエネルギーを感じました。入社までに6ヶ月かかりましたが、それまで1カ月に1回一緒に食事をしてそういった未来の話をしたんですが、一切言葉がブレませんでした。

 マネジメントで一番良くないことはブレることです。朝令暮改がいいですよ。世の中の流れは変わりますから、朝言っていたことよりも、今判断すべき事で夕方決めたことの方がいいのです。一番大切なことは、一度未来の事を決めてそこに向かっていこうと決めたのなら、それを貫こうとする信念です。その信念がブレては社員はついてきません。ブレると社員は不安になります。そのブレない所に私はグッときました。

 当時は、小さなマンションの1室に社員が25人で売上が全体で3億円ほどしかありませんでした。3億というと大きな額のようですが、当時は航空運賃の平均が20万円です。3億円ということは、1500人しかお客様をつかんでいないということです。そうなると、給料は年収100万円以下で夜にアルバイトをしなければ生活していけませんでした。それでも、全然平気でしたね。なぜなら、未来が見えて未来を語れたからです。会社において何が一番問題かというと、社長が未来を語れない事、または、社長が語った夢を他の社員が共に信じれずに辞めていくいことです。人を繋ぎ止めるのは給料や休みなどの待遇だけではありません。私たちが、長時間労働でも、年収100万円以下でも一生懸命働けたのは、未来を信じたからです。未来なんてその当時はわからないですよ。大きな会社の子会社ならまだしも、小さな人が集まって小さな資本金で会社を立ち上げて何が信じられたのか。ここがポイントですね。人を雇う時に、ブレずに未来をしっかり信じれるかどうかです。でも、その信念というのは、最初はすぐにブレます。なぜなら、小さな景気の風にすぐ左右されるからです。悪い時にトップが悲観していたら社員の信用は無くなります。どんな状況でも、大丈夫!と言えるたくましさを持ってないと、なかなか社員はついてこないし信じてくれません。

 また、いい時にいい時なりの給料や待遇に上げていくのは非常にまずいマネジメントです。悪い時の対策を考えていないからです。会社には利益のストックが必要です。ストックを作ったうえで少しずつ還元して良くしていく。そうやって会社を大きくしていきました。あの当時は、格安航空券を売っている会社はいっぱいありましたが、ほとんど無くなりました。なぜかというと、時代の変化についていけなかったからです。世の中は、自分たちが変わらなくても少しずつ変わっています。他社には、その変化を読み取る力がありませんでした。

 私たちも、最初ジーパンにTシャツで働いていました。会社が成長すれば、お客様の会社の見方も変わります。見方が変わっているのに、いつまでもジーパンにTシャツのままでは信用してもらえません。ジーパンにTシャツからスーツへと変化していきました。それが出来ない会社がいっぱいありました。「私たちはジーパンにTシャツで自由を売るんだ!」と言って。自由を掲げた会社はみんな無くなりました。時代の変化やお客様の見方の変化についていくというのは予想以上に難しい事です。最初は、お客様が来たら一緒に旅行の話で盛り上がって、一緒に焼き鳥を食べに行くという旅行クラブ的な会社でしたが、スーツに着替えて商品形態も格安航空券から徐々に変えていき、お客様の要求レベルの変化を察知しながら、自分達も変化してマーケットを拡大していったわけです。徹底的に専門分野にこだわっている会社も生き残っています。例えば、山の旅行ツアーしか取り扱わないとかですね。そういった分野は大手はやりたがらないですから。

 なぜ、私たちが時代の変化に対応できたか。私は1回も髭を剃った事がありません。なぜ、髭も剃ってない人間がエイチ・アイ・エスに入れたのでしょうか。答えは、簡単です。その中で、トップを目指したからです。認められたからです。自由な格好が許されるだけの状況か、仕事をしているかどうかが大事なわけです。その上でお客様に与える印象がどうなのかというのを考えるわけです。自分が新入社員として会社に入社してきて、全員が髭を生やしていていたとしても、それを許容できる状況の中に自分自身が成長していけるかという所が一番ポイントなわけです。自分自身が成長していくことが面白いと思えたから、ジーパンTシャツからスーツに着替えようと思うことが出来ました。

 その頃から、ビジネスって面白いなと思い始めました。多様なお客様と対応する、他の会社の競争相手がいる、様々な業種・業態の中で動いて行くことが本当に面白いと思ったわけです。夢があるなと。この夢と言うのは、仮想のものではなく日々の変化です。皆さんは、変化を日々感じていますか?変化というのは、1秒1コンマ単位で日々進んでいるものです。その変化を感じて面白いなとそう思えるように仕事を出来ているかが非常に重要です。

 私達も日々変化を感じる事ができました。マンションの1室から普通のビルに移り、格安航空券だけを売っていたものから、パッケージツアー販売に移り、お客様も学生中心だったのが一般のお客様も来て下さるようになりました。そして、戦う相手も格安航空券を売る会社から中堅の会社に移り、大手に移って行きました。日々変化していく中で自分達自身がどのように勉強して、どのような商品展開をしていくのかを自分たち自身で学びながらお客様の対応の変化に合わせていくのが面白くて仕方ありませんでした。

 それはなぜかというと、面白くない仕事というのは与えられている仕事です。これは、会社側の中で働いている人たちがどう思うかによって変わってきます。勝ち取ってやるぞというような頭の切り替えが出来るかが重要なわけです。どのような立場の仕事でも、その仕事自身を勝ち取っていくんだ、楽しんでいくんだというような発想に切り替えていく頭の転換が非常に重要です。

継続のススメ

 仕事というのは、作業・貢献できる仕事・その時間基本的にやらなければならない仕事に分かれています。未来の仕事を作りだすというのは、会社にとって貢献できる仕事です。決まった仕事をやるというのは、時間の中においてそこで売上がたつわけですから、どれだけ効率的に出来るか、どれだけプラスの時間を作りだせるかを考える必要があります。プラスの時間を作りだせれば、そのプラスの時間によって未来の仕事を作りだすという会社に貢献できる仕事に転換できるわけです。作業というのは、自分でやらなくていい仕事をやっている状態です。その作業というものをしっかりとマネジメントする事が出来れば会社の機能が良い形で循環していくのですが、ほとんどの会社を見ると、ある程度仕事が出来てマネジメントが下手な人は、人に任せるよりも自分がやったほうが早いので、人を育てるよりも何でも自分でやってしまうので全然人が育たないわけです。そして、本来能力があってその人が交渉すれば上手くいく仕事も違う仕事で時間を潰してしまいます。人は、どんな人でも力を持っているしある程度出来るようになります。もちろん、人によって物覚えが良い、手先が器用などの特性の差はあります。

 IMGP9998.jpgしかし、仕事をやる上で大事なことがいくつかあります。1つ目は、上手い人のマネをして仕事をやることです。2つ目は、繰り返しやることです。3つ目は、競争心を持つことです。この中の一つも欠けてはいけません。競争心を持つ事は勝つ事ではありません。負けない事です。それは、自分自身に負けないという事です。繰り返しやる事には個人差があります。2回で出来る人も20回やっても出来ない人もいます。大事なのは、出来るまでやる事です。やるという行為は誰でも出来ます。「やる」ということを「出来る」という言葉に置き換えてしまうから出来ないと思ってしまうのです。

 19歳の時、初めて行った国がフランスでした。英語もろくに話せず、右も左もわからない状態でした。お金も無いので、安い宿に泊まって毎朝隣のカフェで朝食を食べるようにしていました。その時に、同じ時間に同じテーブルに座って、その周りで交わされる会話をしっかり聞く事を意識しました。1週間も経つと、場面と会話の内容が一致するようになり、今でもその内容はしっかり頭に入っています。繰り返しやるということは、それほど大切な事です。素晴らしい人のマネを1年間繰り返し続ければ、1年後には素晴らしい社員になっています。

 大和ハウスの樋口会長が、福岡支店長に赴任された時の話です。福岡支店は長引く不況の影響で、社員がみんなやる気を失ってしまい赤字の状態がずっと続いていました。当時の樋口支店長は、社員を見渡した時に3人だけ活気のある女子社員を見つけました。その女子社員に電話対応を任せ、誰よりも元気に丁寧に対応するように指示しました。それを半年後続けると、会社の評判が上がり黒字に転じたそうです。仕事とは、小さな事の継続が大切です。

成功するためのマネジメント

 仕事に行き詰った時は、お客様の立場に立って見る事が大切です。例えば、同じビジネスをやっている同業他社にお客様として行く事です。プロの立場として行ってはいけません。プロとしての甘えや諦めが出てしまうからです。お客様の視点で見ると、何をしてもらったら嬉しいかがわかります。自分がお客様としてやってもらいたい事は、お客様もやってもらいたい事だからです。私達も26歳の時に、徹底的に同業他社をお客として周って、他の良いところをかき集めました。挨拶を元気にやる、きびきびとスピードを持って仕事をするなど、お金を使わなくても改善できる点に取り組みました。また、何を尋ねられても他の旅行会社より速やかに答えられるようにしました。自分の仕事の事を尋ねられても、答えられない人はたくさんいます。しかし、自分の販売している物の事さえ説明出来ないようではダメです。大手の旅行会社にお客として訪問し、説明を頭に入れて勉強し、どんな小さな事でも詳しく速やかに答えられるよう心がけました。すると、段々お客様から難しい質問をされるのが嬉しくなっていきました。今までの経験値以上のものに出会ったときに、嬉しいとかやりがいを感じる事が出来ることが仕事においてとても大切な事です。仕事とは、今の自分達がやっていた事よりも、さらに難しい所を目指して高めていくものです。それを続けていると段々と評判が上がり、メディアにも取り上げてもらえるようになって、大手からの仕事が回ってくるようになりました。

 みなさん、楽な仕事が面白いと思っていませんか?それは間違っています。楽な仕事なんて面白くも何ともありません。キツイ仕事、大変な仕事をどうこなしていくかが面白いんですよ。問題にぶち当たった時に、どうこなすかどうやるか。大変かもしれないけど、それを高めていくのが仕事の面白さです。それをスタッフ、自分自身に理解させないと面白くありません。キツイことはたくさんあります。しかし、それが自分を高めてくれます。キツイ経験や辛い経験をすると自分自身のフレームを広げる事が出来ます。フレームとは自分の限界の事です。人はそう簡単に限界を超えてパンクしません。仕事が出来る、出来ないの違いの一つは段取りです。自分のやる具体的なアクションを頭の中に描けるかがポイントです。その練習方法があります。やるべき仕事を前日に全部書き出します。その中で、重要・緊急・重要でない・緊急でないの4つのカテゴリーに分けます。重要とは、一番会社に貢献できる事、つまり、売上を作っていく事です。緊急とは、会社にとって大きな損失を与える、もしくは、やることによって大きなチャンスになる事です。
 カテゴリーに分けた後に、その中で優先順位をつけます。そして、ビジネスのゴールデンタイムと呼ばれる午前中の3時間に一番重要かつ緊急な仕事をやります。その時間帯はとても集中力の高い時間帯なので、より速やかに仕事を行う事が出来ます。スケジュールは一番優先順位の高いものから入れていくことが大切です。そのようなスケジュール管理をしっかり行う事が非常に重要です。たいてい、部下が動けないのは何をしていいのかわからないからです。その人の能力を最大限に引き出せるような仕事を上司が与える事が出来れば、仕事の生産性は大幅に上がります。そのようなスケジュールを組むことが会社のマネジメントにおいて非常に重要な事です。

仕事は面白い!自分を変える思考術

 仕事は面白いですよ。難しい、キツイ 大変。この言葉は、自分自身を育ててくれると思って前に進んでいくと、自分の可能性を広げる事が出来ます。あなた達は、絶対に出来る。なぜなら、私が言っているからです。普通の高校を出て、専門学校を卒業し、バックパッカーとして世界中を歩き回っていたような人間ですから。ビジネスのノウハウなんて何もわかりません。私たちは、徹底的に上手くいっている会社のマネをして業績を伸ばしました。上手い人のマネを出来るまで繰り返しやり続けました。他社や同僚に負けたくないと競争心を持って仕事をやりました。偉い人はベストを目指せとよく言います。しかし、いきなりベストを目指せるような人は、もうすでに自分でやっています。ベストとは、グッドの積み重ねで出来ています。目の前の階段を一歩ずつ上がっていく事は誰でもできます。いきなり大股で上がろうとするから難しいのです。一つのステップを上がる、グッドの積み重ねでベストを目指していく。途中で休まなくてはいけない時があってもいいのです。でも、辞めてはいけません。継続というのは、休んでもいいけれど辞めてはいけません。何もしなくて終わった事よりも、3分の1でも出来た事の方が価値があります。そのような目で部下を見てあげて下さい。 

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 部下の良い所は、褒めるのではなく認めてあげる事が大切です。認めてあげて、しっかりと受け入れてあげることです。人は、受け入れないとついてきてくれません。認めてあげることは、その人の長所も短所も含めて受け入れてあげる事です。その為には、プラスの面もマイナスの面も両方受け止めてあげる度量を身に付ける事が必要です。どちらに偏りすぎてもいけません。時々、理念や相性が合わなくて横を向いている社員もいます。そういった時には、叱る事も必要です。社員への気遣いは大切です。しかし、遠慮をしてしまってはダメです。それは、自分にも社員にも両方言える事です。遠慮し合っていてはダメです。言いたい事は言わなくてはいけません。私はそのように考えていました。

 人っていうのは、自分の価値基準の中で幸せというものがそれぞれ違います。自分の幸せをしっかりと理解した上で自分を作りだしていく必要があります。私も最初大企業にいましたが、独立して小さな企業を立ち上げました。私にとっての目標が、大企業で働く事ではなく、自分で自分の時間や仕事を作りだすことだったからです。それが、私の幸せだったからです。そういった自分の目標を達成するためには、一歩一歩ステップアップしていく必要があります。そのための良い方法があります。「叶」という漢字があります。その下に、マイナスを付けると「吐」になります。自分のマイナスの部分を吐きだすのです。しかし、吐きだす時には自分より下の立場の人間では無く、目上の人間や自然に吐きだすようにしてください。すると、「吐」から、「叶」になります。マイナスの事を吐きだすと、プラスの事だけ残って叶います。

 人間は強くありません。しかし、弱くもありません。上手い吐きだし方を知っているからです。マイナスなものを吐きだして、一つ一つステップアップして自分を高めていきます。そして、未来にやろうとしている事を具現化して自分の将来設計図を描けるかどうかも重要です。具現化させる事が出来たものは叶える事が出来るものです。失敗する事も大切です。失敗すると、自分の発想の中に足りなかったものに初めて気付く事が出来るからです。あとは、一歩進む勇気を持つことも重要です。上手くいかない時は、撤退する勇気を持てばいいのです。その勇気を持たないからいつまでも上手くいかないのです。1からやり直す勇気を持つ事はとても大切です。無駄なプライドは自分の成長を妨げます。背伸びするのではなく、素直に地道に頑張る事の出来る人はとてもカッコイイと思います。大きく自分や自分の状況を変えたいという信念を持ってブレずに進めば、出来ない仕事はありません。

 悲観しない、難しい事はプラスに考える。そうやって自分の気持ちを高めて、前に進んでいくだけで必ず道を切り開けます。皆さんは、未来を作る事が出来ます。過去は変えられません。未来に向かって楽しく一歩ずつ進んで行ってください。

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